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日本経済新聞 (2018年11月25日朝刊)『The STYLE / Life』の記事で当社社員が紹介されました。

日本経済新聞 (2018年11月25日朝刊)「手機が織りなす錦の美」

2018.11.30

 「龍村の帯」。和服を着る女性の多くが「一度は締めてみたい」と憧れるのが明治創業の京都・龍村美術織物の帯だ。創業者の龍村平藏の飽くなき美の追求によって立体的な纐纈織(こうけちおり)、高波織(たかなみおり)など様々な手法を確立、華麗な錦を生み出してきた。
 皇室への献上品も多く、安倍晋三首相からトランプ米大統領への贈り物に選ばれた織物もある。22人の手機(てばた)職人がいる京都・西陣の工房では、最高齢の岩間利夫さん(84)が60年以上、全身全霊で錦の美に打ち込み続けている。
 タン、タンタン――。京都市上京区の昔ながらの織機が並ぶ工房に、縦糸と横糸を合わせいていく音が響き渡る。「織らしてもらっていても、美術品だと思う。」ひときわ軽妙なリズムを響かせているのが岩間さんだ。
 ピンクや水色、黄色など色とりどりの横糸を通す舟形の木製用具「杼(ひ)」を、ぴんと張られた5千本の縦糸に手際よく通していく。そして力を込めて縦糸と横糸を組み合わせる。ほとんど図柄は見ない。1日8時間ほど織機に座りっぱなしで、糸を上下させるための踏み木を踏み続ける。手足を駆使し、全身を使って豪華な帯を織り上げていく。
 国産の絹糸を使い、幅31センチ、縦4メートル50センチの帯1本が仕上がるまでに3週間~1ヵ月。岩間さんが現在織っているのは桃山時代の欄間からデザインのヒントを得た、初代龍村平藏の発案による「彩彫寿松錦」だ。金地に大胆で色鮮やかな松が、少しずつ現れてくる。
 岩間さんが初めて織物を織ったのは中学生の時。父親も職人で、家には3台の機があった。後ろ姿を見て自然と同じ道を選んだ。23歳で龍村に入った当時は「ほとんど70~80代のベテランばかり。大先輩の織り方を見て、深く感動した」。うまい人は機を織る「音が違う」。どうやればうまく織れるのかは「自分で考えてみ」と言われ、ひたすら先輩の織り方を見て覚えた。
 やがて、リズムを取り五感を研ぎ澄ませ、音を聞きながら無心で織るようになった。織っている間、できあがった部分は機のロール部分に巻き取られていくため、手元には数センチの模様しか見えない。完成まで全体を見ることはかなわず、キズがないか「完成品を見るのが怖くもある」。
 デザイン、質、技術と、誰が見てもほれぼれと見入ってしまう錦。「自分の技術を最大限出して、最高のものを作るよう心がけている」。一日中工房にこもりきりだが、美術品ともいえる織物を手掛けるのは「喜びであり、楽しい」と笑顔を見せる。
 ただ締めるだけの帯ではないと思っている。「お客さんはたんすにしまわずに、飾っているのではないか」と自分でも思うほど。帯には龍村の文字は入るが、仕上げた自分の名は入らない。だが、できあがった織物の美しさには自信がある。
 龍村の帯はいつの時代にあっても多くの人をひきつける。数年前、岩間さんが龍村で初めて織った金銀糸を使ったインドの錦をデザインした帯の注文が舞い込んできた。60年近くを経て、同じデザインの帯の注文が自分のもとにきたことに「驚喜した」という。
 「昔と比べると糸の材質も変わってきているのが残念」と嘆くこともあるが、野心もある。隙間のある織物を作る「羅(ら)織り」という奈良・平安時代にあった難易度の高い技術を習得することだ。その昔、芥川龍之介が「恐るべき芸術的完成」と評した龍村の織物。織の美の追究に終わりはない。 /高橋里奈・井上昭義(撮影)

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株式会社 龍村美術織物
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