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2023.05.01クリスチャン・ディオールが愛した「龍村美術織物」

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日本が誇る伝統的な美術織物が、世界的なファッションブランド「ディオール(DIOR)」の作品に採用されていることをご存知でしょうか?

現在東京都現代美術館にて開催中の「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展は、ディオールの75年を超える軌跡、そして美しいオートクチュールなどのコレクションが一堂に会する貴重な展示が見られ、会期開始直後から連日盛況を収めています。終了まで残りわずかとなったこの展覧会では「ディオールと日本の絆」が主題の一つとして取り上げられています。中でも日本との関わりとして、龍村美術織物が提供した素材を使用したコレクションは必見です。本記事では、展示会の見どころとして、パリのディオールと京都の龍村美術織物の知られざるコラボレーションの経緯を、改めてご紹介します。展示の見方がワンランクグレードアップする情報を手に、ぜひ会場へ足をお運び下さい。

©YURIKO TAKAGI 出典:クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Christian_Dior/

日本とムッシュ ディオールについて

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展は、ディオールの創設者であるクリスチャン・ディオールがインスピレーションを得た夢の世界をテーマにしたものであり、ファッション界のみならず多くの人を魅了しています。

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展 展示風景(2022年)東京都現代美術館 ©︎DAICI ANO

本展は、パリ装飾芸術美術館での成功に続き、ロンドン、ニューヨークへと巡回し、満を持して日本・東京にやってきました。今回の展示ではディオールと日本との真摯かつ貴重な絆を称える特別な展覧会として位置付けられていることでも知られています。

「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展 展示風景(2022年)東京都現代美術館 ©︎DAICI ANO

展示風景©︎龍村美術織物

幼いころから日本の文化に親しんでいたクリスチャン・ディオールは、戦後の洋装化への転換期に西洋のファッションブランドとして日本に最初に上陸しました。1953年には、紡績会社の鐘紡、呉服店を起源とする百貨店の大丸とパートナーシップ契約を締結。クリスチャン・ディオールから提供されたパターンをもとに、各社の布地を使用した衣服の製造と販売がスタート。その流れは日本の洋裁学校にも波及し、ディオールの華麗なるスタイルは全国に普及してゆきました。ディオールは日本のファッション文化と切り離せない存在だったのです。

ディオールを魅了した龍村美術織物の生地

こうした時代背景の下、日本の絹の輸出振興の一環として、1953年に日本からディオール社へ数多くの生地見本が送られます。そのなかでもムッシュ ディオール本人の目に留まり、彼を魅了する事になったのが、京都の龍村美術織物が仕上げた絹織物「早雲寺文台裂」でした。金糸・銀糸や鮮やかな色糸を用い、上品な色合い、艶やかな光沢を持つ、この「早雲寺文台裂」との出会いは、ディオールのファッション哲学、世界観にも合致する、奇跡の邂逅だったのです。

龍村美術織物などのジャパンファブリックを手に取るクリスチャン・ディオール©︎龍村美術織物

ディオールは龍村美術織物の絹織物の美しさに心を惹かれ、翌年1954年の秋冬コレクションの“Utamaro(歌麿)”、“Tokio(東京)”、“Rashomon(羅生門)”とネーミングされた作品にそれぞれ生地を取り入れました。今回の展示でも、これらの作品がご覧いただけます。

龍村美術織物の生地を使用した「羅生門」展示風景©︎龍村美術織物

また、この「早雲寺文台裂」は、現代においても、歴史と伝統が込められた、龍村美術織物の美意識が表現されている逸品として、年代を選ばず多くの方に愛されています。現在も生産されており、龍村美術織物のサイトでも取り扱いがございます。ご興味がある方は、下記の特集ページよりご覧ください。

早雲寺文台裂テキスタイル©︎龍村美術織物

皇室が愛したウエディングドレス

1954年、日本の文化に心惹かれたクリスチャン・ディオールは、龍村美術織物が織り上げた生地で美智子様(現在の上皇后)がご成婚の際に召されたドレスをデザインします。ディオール独自の色彩感覚と龍村美術織物の風合いが調和するドレスの制作という出来事は世代を超えて多くの人を魅了しました。

皇室とディオール©︎龍村美術織物 / ローブデコルテをお召しになる美智子様(現上皇后)©︎ Keystone-France/Gamma-Rapho

また、婚礼パレードのドレス(ローブデコルテ)には、龍村美術織物による「明暉瑞鳥錦(めいきずいちょうにしき)」が採用されました。明暉瑞鳥錦は、絹地に鳳凰や龍といった大変縁起の良いデザインが金糸や銀糸等で織り込まれたものであり、まさに祝福の門出にふさわしい生地でした。

至高の技と美をもって織り上げられた龍村美術織物のテキスタイルが、フランスが誇るモードの最高峰、オートクチュール文化と繋がり、象徴的なドレスが生まれた事は、ディオールと日本との縁を決定づける歴史的な出来事であったといえるでしょう。

オートクチュールと日本の「匠」の技の共通点とは?

龍村美術織物のテキスタイルと、フランスが誇るモードの最高峰、オートクチュール文化に共通しているのは「サヴォワールフェール(匠の技)」。この匠の技によって生み出された数々の作品と共に、「女性をより美しく、より幸福に」というムッシュ ディオールの願いは、現代にも受け継がれています。そして龍村美術織物でも、匠の技が受け継がれると共に、美術織物というジャンルの確立とその魅力の発信が今日も行われています。

龍村美術織物代表取締役社長・龍村育は、今回の展示会について次のように語ります。

「1950年代に弊社がディオール氏に提案したのは「フランス人(ヨーロッパ人)が好むであろうとデザインされた生地」と「平素から弊社が復元してきた名物裂(めいぶつぎれ:元は茶道具に重用されてきた裂地)そのもの」の2種類でした。果たしてディオール氏は後者を選ばれたのです。これはディオール氏が、日本文化のエッセンスが高純度で凝縮したものを瞬時に見抜き、良さを理解されたのだと思います。当時はヨーロッパから物心ともに遠く離れた日本で息づいていたファブリックが世界でも通用する、という証明がなされたエポックメイキングな瞬間だったと思います。弊社はそのような瞬間に立ち会えた幸運とその感動を今も忘れず日々「最高之品質」を社是に美術織物の制作に励んでいます。展示会場では全感覚でディオールと日本の永きに渡る足跡をご堪能される事は間違い無いと思います。皆さまぜひ会場に足をお運びください。」

ムッシュ ディオールが大切にしていた、美を支えるアトリエ(工房)への愛、技への情熱と、龍村美術織物に連綿と受け継がれてきた至高の技と美へのこだわり、このように両者には非常に共通点が多いといえるでしょう。「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展では、ディオールのあくなき美への探求、そして龍村美術織物の織物の美しさと高い品質を、存分にお楽しみ頂く事が出来ます。

イベント・メディア情報

龍村美術織物は、今後もディオールと築かれた縁、日本の文化との縁をより深く、大きく発展させるべく、世界に誇れる美術織物の技術とデザインを発信してゆきます。今回の展示をきっかけに龍村美術織物の製品に興味を持っていただけた方は、是非一度製品を手に取って頂ければと思います。情報充実の公式ブランドサイトや、便利な公式オンラインショップをどうぞご利用下さい。